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親の土地に家を建てた方へ

親の土地に家を建てた方へ

親名義の土地や、親名義の敷地内に、子の一人が自宅を建築するということはよくあります。

その後、親が亡くなった際に、相続でトラブルになることがあります。

なぜトラブルになってしまうかというと、次のような点が理由であることが多くあります。

  • 遺産となる土地の評価について相続人間で意見が対立する
  • 土地を使用している相続人が、他の相続人にお金(代償金)を支払う意思がない
  • 土地を使用している相続人が、土地を取得したいけれど、お金(代償金)を用意できない
  • 土地を使用している相続人が、感情的になってしまい、話し合いにならない

ここでは、親の土地に家を建てたというケースについて説明していきます。

土地はどのように評価するのか

建物が建っている土地は、建物が建築されているので市場で売りづらく、土地の評価は下がるようにも思えます。しかし、裁判実務においては、相続人が使用貸借している(無償で借りている)土地は、更地と同様に評価されます。無償で土地を利用している点を考慮して、他の相続人との公平を保つためです。

更地の土地の価値をどのように評価するかという点は、①固定資産税評価額、②相続税評価額(路線価による評価)、③実勢価格などにより決めていきます。ただし、③の実勢価格がいくらなのかという点は明確にすることが難しいところです。不動産業者による査定や、不動産鑑定士による鑑定により、定めることが多いです。なお、不動産鑑定士は、家庭裁判所が選任した中立な鑑定士でなければならないという点に注意が必要です。相続人の一部が個人的に依頼した不動産鑑定士による鑑定では、中立性が疑われるため、他の相続人が同意しない限り、裁判所はその鑑定結果を採用しません。

このように土地の価値が定まってくると、親の土地上に建物を所有している相続人が、その土地を相続するということになったのであれば、土地を相続する代わりに、お金(代償金)を支払うという合意をすることになります。あるいは、その土地を共同で第三者に売却するという方法も可能です。

競売

では、土地を使用している相続人が、お金(代償金)を支払う意思がない場合や、お金(代償金)を用意できない場合は、どのようにしたら良いのでしょうか?

土地を分ける(分筆)ことができるのであれば、分筆するという方法が考えられます。

もっとも、建物が建っている場合では、土地を分筆して分けることが困難でしょう。

このような場合には、不動産を売却して代金を分けることになります。

ただし、不動産を共同で売却するためには、相続人全員が協力して不動産仲介業者に売却を依頼しなければなりません。買主が見つかった場合には、相続人全員で売買契約をして、所有権を買主に移転する登記手続をすることになります。

このように、共同で売却するためには、すべての相続人の協力が必要ですから、相続人の1人でも協力が得られない場合には、売買契約という方法をとることができません。

ここまでを整理すると、土地を使用している相続人が、代償金の支払をする意思がない場合や、共同売却ができないという場合などがあることが分かりました。

このような場合には、最終的には、不動産競売を行います。不動産競売は、裁判所で行う不動産の売却です。家庭裁判所に土地の競売を命じる審判(決定)が出してもらい、この審判に基づいて、相続人のいずれかが、地方裁判所に不動産競売の申立をすることになります。

具体的には、相続人のいずれかが裁判所に競売を申し立てます。その後、裁判所において、不動産鑑定、買受可能価額の決定、物件の情報公開、買受希望者による入札書の提出、開札日に最高価買受申出人の決定、買受申出人による裁判所への代金納付、所有権移転登記という手続となります。

そして、裁判所に納められた代金が、裁判所から各相続人に分配されることになります。

なお、代金を納付した土地の買受人は、無償で土地を使用して建物を建てている相続人に対し、建物の収去を求めることができるのが原則です。

以上の競売手続にはデメリットがあります。

不動産仲介業者に頼んで一般の市場で売却する場合(任意売却)に比べ、売買代金が低くなってしまうことが多くあります。入札自体は、通常の評価額の56%とされてしまいます。

そのため、遺産分割調停や遺産分割審判が進んでいき、競売手続になりそうな状況になると、全ての相続人が、不動産仲介業者に頼んで市場で売却することを合意するということが多くあります。

土地を使用している相続人が、お金(代償金)を支払わない場合の進め方

では、土地を使用している相続人が、感情的な理由などで代償金を支払おうとしない場合、どのように遺産分割を進めるのでしょうか。

当事者同士で話が進まない場合には、まずは弁護士を入れて交渉することをお勧めします。弁護士が入ることで、裁判手続は避けたいとの気持ちが働き、相手方が交渉に応じることが多いからです。

相手が交渉に応じない場合には、遺産分割調停の申立てをし、手続を進めていくことで、競売まで行く前に、相手方が、代償金の支払いや、不動産の共同売却に応じるのが普通です。

土地を取得したい場合の進め方

親の土地に家を建てており、土地の取得を希望する場合は、できる限り、他の相続人に支払うお金(代償金)の金額を低くしてもらえないか検討することになります。

例えば、土地の評価を下げる要因がないかチェックします。具体的には、建物建築に関する事情(接道要件、市街化調整区域内、農地等)、境界確定に関する事情(公図混乱地等)、土地整備に関する事情(崖の整備費用等)です。

土地の評価に関することだけではなく、売却に際して生じる経費(譲渡所得税・住民税、仲介手数料、測量費用、家財処分費用等)もチェックします。

それでも交渉が進まない場合には、遺産分割調停の申立てをすることになります。

最終的には、代償金を支払うことが必要となることもよくあります。なお、代償金を用意できない場合には、金融機関からの借入れも検討しましょう。

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