Q 相続放棄をすれば、不動産の管理義務や固定資産税の支払いから完全に解放されますか?

【Q&Aで解決】相続放棄のよくある疑問・誤解を弁護士が分かりやすく解説!
「借金や管理しきれない不動産があるため、相続放棄をしたい」「でも、相続放棄をすれば本当にすべての悩みから解放されるのだろうか?」
相続放棄は強力な手続ですが、仕組みを正しく理解していないと、思わぬトラブルに巻き込まれたり、手続後に後悔したりすることがあります。
今回は、特にご相談の多い疑問について、代表的な5つのQ&A形式で分かりやすく解説します。
Q1. 相続放棄をすれば、不動産の管理義務や固定資産税の支払いから完全に解放されますか?
- 固定資産税の支払い義務はなくなりますが、不動産を「現に占有」している場合は、管理(保存)義務が残ります。
① 固定資産税について
相続放棄が家庭裁判所に受理されると、あなたは「最初から相続人ではなかった」ことになります。そのため、被相続人(亡くなった方)が滞納していた固定資産税はもちろん、相続放棄をした後に発生する固定資産税についても、支払う義務は一切ありません。
② 管理義務(保存義務)について
従前は「相続放棄をしても、次の人が管理を始めるまで管理義務が残る」とされており、非常に重い負担でした。しかし、2023年(令和5年)4月の民法改正により、ルールが大きく変わりました。
新しいルールでは、「相続放棄の時に、その不動産を『現に占有(実際に住んでいる、占有・支配している)』していたかどうか」が基準となります。
・「現に占有」していない場合(別居していた実家など)
相続放棄をすれば、引き渡し先が決まっていなくても、不動産の管理義務(保存義務)を引き継ぐことはありません。
・「現に占有」している場合(同居していた自宅など)
相続放棄をした後も、次の相続人や相続財産清算人にその不動産を引き渡すまでの間は、現状を維持する程度の保存義務が残ります。もし放置して老朽化した空き家が倒壊し、隣家に被害を与えた場合などは、損害賠償を請求されるリスクがあるため注意が必要です。
Q2. 被相続人の未払い医療費や葬儀費用を、親の口座から支払ってしまいました。相続放棄はできなくなりますか?
- 「葬儀費用」を常識的な範囲で支払うことは問題ありませんが、未払い医療費の支払いは相続放棄ができなくなる(単純承認)リスクがあります。
相続放棄をする前に、被相続人の財産(預貯金など)に手をつけて処分してしまうと、法的に相続を認めたとみなされる「単純承認」となり、相続放棄ができなくなってしまいます。
・葬儀費用
裁判例より、被相続人本人の遺産から「常識の範囲内(身の丈に合った一般的な葬儀)」の費用を支払うことは、道徳的・社会的にも認められる行為であり、単純承認には当たらない(=相続放棄できる)と解釈されています。
・未払い医療費の支払い
被相続人の財産から医療費や施設の未払い金を支払う行為は、「被相続人の債務(借金)の弁済」に当たり、遺産の「処分」とみなされる可能性が極めて高いです。
なお、相続人自身の固有の財産(自分のポケットマネー)から親の医療費を支払う行為であれば、単純承認にはならず、相続放棄への影響はありません。
自己判断で親の口座から引き出しを行ってしまう前に、必ず一度弁護士にご相談ください。
Q3. 相続放棄をしたことは、他の親族に通知されますか?また、次の順位の相続人に連絡はいきますか?
- 家庭裁判所から他の親族へ通知がいくことはありません。ただし、次の順位の相続人には自動的に相続権が移るため、ご自身から次の順位の相続人に連絡しておくと良いでしょう。
① 裁判所からの通知について
あなたが相続放棄の手続きをしても、家庭裁判所が他の親族に対して「〇〇さんが相続放棄をしました」と親切に通知してくれることはありません。
② 次順位への相続権の移動について
あなたが相続放棄をすると、相続権は法律で定められた順位に従って、次の人へ自動的に移ります。
・第1順位の相続人(子ども)
・第2順位の相続人(直系尊属=親や祖父母)
子ども全員が相続放棄をすると、直系尊属に相続権が移ります。
・第3順位(兄弟姉妹・甥姪)
さらに親が既に亡くなっていたり、または親が相続放棄したりすると、兄弟姉妹等に相続権が移ります。
例えば、借金だらけの親の財産を「子ども一同」が内緒で相続放棄した場合、何も知らない叔父・叔母(被相続人の兄弟姉妹)に突然莫大な借金の請求がいってしまいます。
親族間で余計な不和を生まないためにも、「自分たちは相続放棄をした(または、する予定である)」ことを、事前に、あるいは受理された後に直接伝えておくのが賢明です。
Q4. 相続放棄の「3か月」の期限を過ぎてしまいました。もう絶対に放棄はできませんか?
- 原則はできませんが、「財産や借金が全くない信じていた」など、特別な事情があれば、期限後でも認められるケースがあります。
相続放棄は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時(通常は被相続人が亡くなったことを知った日)から3か月以内」に行わなければなりません。この期間を「熟慮期間」と呼びます。
しかし、以下のようなやむを得ない事情がある場合には、3か月を過ぎてから家庭裁判所に申し立てても、例外的に相続放棄が受理されることがあります。
・「親とは何十年も音信不通で、亡くなったことは知っていたが、財産も借金も一切ない(ゼロである)と信じ込んでいた」
・「亡くなってから半年後に、突然銀行や消費者金融から督促状が届き、初めて借金(負債)の存在を知った」
このような場合、「借金の存在を知った日から3か月以内」に、当時の状況や知らなかった理由を詳しくまとめた上申書(説明書)を添えて家庭裁判所に申し立てることで、認められる可能性があります。ただし、ハードルは非常に高いため、期限を過ぎてからの手続は弁護士へご依頼ください。
Q5. 相続放棄の手続を弁護士に依頼すると、どのようなメリットがありますか?
- 確実な受理、面倒な書類収集の代行、そして他の親族へのサポートまで「安心感」が全く違います。
相続放棄は一度限りの手続であり、書類の不備や、回答書の書き方のミスによって家庭裁判所に却下されてしまうとリスクが高すぎます。
弁護士にご依頼いただくことで、以下のような多大なメリットが得られます。
・戸籍謄本など「大量の必要書類」の収集を丸投げできる
(※特に第3順位の兄弟姉妹が相続人になる場合、被相続人の出生から死亡まで+祖父母の死亡記載など、数十通の戸籍を集める必要があり、一般の方では挫折しがちです)
・「3か月を過ぎた案件」や「単純承認が疑われるグレーな行為をしてしまった案件」でも、裁判所を納得させる法的な有効な上申書を作成し、受理の可能性を最大化する
・他の相続人や次の順位の親族への「相続放棄の進捗報告」や「法的な説明」の窓口を代行し、親族間の心理的負担を軽減する
相続放棄でお悩みなら、弁護士法人松本直樹法律事務所へお気軽にご相談ください。
「借金から逃れたいけれど、実家の空き家の管理はどうなる?」 自分が放棄したら、田舎の兄弟に迷惑がかかるのでは……」
相続放棄は単に書類を出すだけの手続ではなく、その後の不動産管理や親族関係にまで影響が及ぶ、慎重な判断を要する手続です。
当事務所では、お客様のご状況を丁寧にヒアリングし、相続放棄をすべきかどうかの見極めから、家庭裁判所への確実な手続、さらには放棄後のアドバイスまでトータルで親身にサポートいたします。
相談者様がこれからの人生を安心してスタートできるよう、法律のプロとして全力で並走します。ぜひお気軽にご相談ください。
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