相続した田舎の土地・山林、どうやって手放す?売却・寄付・引き取り・国庫帰属を「費用と手間」でケース別に弁護士が比較
相続によって地方の農地や山林、いわゆる「負動産」を取得したものの、管理の負担や固定資産税の支払いから「どうにかして手放したい」とお悩みの方は少なくありません。
土地を手放す手段には、売却、寄付、引き取りサービス、相続土地国庫帰属制度、相続放棄など複数の選択肢が存在します。それぞれ必要な費用や手間、適用要件が大きく異なるため、事案に応じた適切な判断が必要です。
本記事では、各手段の比較から現実的な売却ルート、個人間売買の注意点、更には共有名義土地の解決策まで、弁護士が詳しく解説します。
相続放棄も国庫帰属も検討したが、結局どうやって手放せばいい?
土地を手放すための主な5つの手法について、費用と手間の観点から整理します。
①売却
・費用: 媒介手数料、測量費(必要な場合)、農地転用手続費用等
・手間: 買主の探索、現地案内、契約交渉等
・概要: 第三者へ売却して対価を得る方法です。市場価値が極めて低い土地では買主を見つけるのが困難ですが、条件が合えば費用負担を抑えて収益を得られます。
②寄付・無償譲渡
・費用: 登記費用(所有権移転登記の実費)、公図・登記事項証明書等の取得費
手間: 自治体や法人との交渉、要件確認
・概要: 自治体や近隣の自治会、個人等へ無償で譲渡する方法です。自治体が寄付を受け入れるケースは「公共利用の目的がある場合」などに限定されるため、ハードルは高めです。
③民間の引き取りサービス
・費用: 引き取り処分費用(数十万~数百万円程度)
・手間: 業者への依頼、現地調査の立ち会い、契約締結
・概要: 有償で不要な土地を引き取らせる民間サービスです。費用は高額になりがちですが、国庫帰属の要件を満たさない土地でも引き取ってもらえる可能性があります。ただし、悪質な業者とのトラブルに注意が必要です。
④相続土地国庫帰属制度
・費用: 審査手数料(土地1筆につき1万4000円)、負担金(原則として標準的な宅地・農地で20万円、森林は面積に応じた算定)
・手間: 審査書類の作成、添付書類(測量図・写真等)の準備、現地調査への対応
概要: 相続や遺贈によって取得した不要な土地を国に引き取ってもらう制度です。建物がないこと、土壌汚染がないこと、境界が明確であることなどの厳格な要件を満たす必要があります。
⑤相続放棄
・費用: 裁判所申立実費(収入印紙800円等)、弁護士費用
・手間: 申立書類の作成、家庭裁判所とのやり取り
・概要: 相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てることで、プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄する方法です。「いらない土地だけを放棄する」ことはできず、他の遺産もすべて放棄することになります。また、次の管理者が管理を始めるまで保存義務が残る点にも注意が必要です。
田舎の土地の現実的な売却ルートとは?宇都宮の弁護士が解説
不動産業者を通じて仲介に出しても買い手がつかない田舎の土地や山林であっても、ターゲットを絞ることで売却に至るケースがあります。
①隣地所有者への打診
最も現実的な売却先の一つが「隣接する土地の所有者」です。隣地所有者にとっては、敷地を広げられる、第三者に買われてトラブルになるのを防げるなどのメリットがあるため、市場価格以下や無償に近い金額であっても引き取ってもらえる可能性が高まります。
②地元農家や林業者への打診
対象地が農地や山林の場合、地域の農地所有者や農業参入者、林業関係者へ購入を打診するルートがあります。農地の売買には農地法上の制限(要件を満たした農家や農業法人への許可・届出)が存在するため、事前の法令確認が不可欠です。
個人間売買の注意点について
隣人や知人との個人間売買は、不動産業者を挟まないため手数料を抑えられる一方、法的なリスクが伴います。
①契約トラブルのリスク
境界が曖昧なまま売買を行ったり、契約書に「契約不適合責任(旧: 瑕疵担保責任)」の免責条項を適切に記載しなかったりした場合、売却後に「土壌からゴミが出た」「境界で揉めている」などの紛争に発展する恐れがあります。
②譲渡所得税の課税
売却によって利益(譲渡益)が生じた場合、所有期間に応じた譲渡所得税・住民税が課税されます。取得費や譲渡費用の計算を適切に行う必要があります。
③贈与税(低額譲渡)のリスク
「早く手放したいから」と適正な市場価格よりも著しく低い価格で個人間で売却した場合、実質的な贈与とみなされ、買主に「贈与税」が課されるリスク(低額譲渡)があります。価格設定には注意が必要です。
共有名義・相続人が多い田舎の土地を手放すには?
田舎の土地は、数代前の相続で放置され、多数の共有名義になっているケースが珍しくありません。
①遺産分割・持分の集約を先行させる
共有状態のままでは、売却や国庫帰属申請、変更行為を行う際に全共有者の同意が必要となります。そのため、事前に未分割の遺産分割協議を行ったり、他の共有者から持分を買い取ったり贈与を受けたりして、持分を一人の名義に集約することが第一歩となります。
②連絡の取れない共有者がいる場合の対処法
長年放置された土地では、共有者の一部が行方不明であったり、相続人が枝分かれして面識のない親族が多数存在したりすることがあります。
このような場合、2023年(令和5年)4月施行の改正民法により新設された「所有者不明土地管理制度」や「不確定共有者がある場合の持分譲渡・変更手続」などを活用することで、裁判所の許可を得て土地の売却や手続を進めることが可能になりました。
不動産相続を弁護士へ依頼するメリットとは?
不要な不動産の手続きや売却交渉を弁護士に依頼することで、以下のメリットが得られます。
・相続土地国庫帰属制度の要件診断から申請書類の作成・提出までを一括してサポートできます。
・複雑な共有関係の持分集約や、不確定共有者・所有者不明土地に対する裁判手続を迅速に進められます。
・個人間売買における契約書の作成や、紛争を防ぐための契約不適合責任免責等の条項整理を確実に行えます。
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